御影石は採掘された石材の中でも花崗岩に分類される石材を建築用や墓石用に表面を研磨し磨き上げた建築資材の一つじゃ。
御影石は日本の建築現場では外壁や門柱、外構部の敷石から玄関の床タイル材、キッチンに至るまで幅広い用途で活用されておる為、一度は目にしたことがある方も多いじゃろう。
尚、御影石は天然の石材から加工する製品で産地によって石材の特徴や重さ、模様に至るまで多様な種類があり建築現場によって使用される石材の種類なども変化してくるものじゃ。
建築資材としての外壁や床材、敷石、タイルなど幅広い用途で使用されている御影石。
この御影石はいったいどのような特徴を持つ建築資材なのだろうか?
ここでは御影石と呼ばれるようになった名称の由来や歴史的建造物への使用、また御影石を構成する主成分について確認していこう。
御影石は建築資材として日本では特に広く使用されておる石材の一種じゃ。
日常生活の中では主に床材としてのタイル・敷石・の他、壁材などの装飾材として見かけることが多いじゃろう。
尚、この御影石という名称は主に石材として使用される際に呼ばれる名称であり、正式には「花崗岩(かこうがん)」と呼ばれる石の種類に分類されておる。
御影石の主成分は「石英」「長石」(斜長石・カリ長石等)を主成分とした石材で10%程度の「雲母」を含む石材が御影石として分類されておる。
地球上の地殻中には割りと豊富に存在する鉱石でもあり、加工も施し易く建築資材としては有能な建材と言えるじゃろう。
御影石の名前の由来は御影石の有名な産地である「神戸市東灘区(旧武庫郡御影町)」の御影からつけられておる。
この事からも御影石と呼ばれる建築資材は日本特有の呼び方であることがわかるのぉ。
御影町(旧名称)は六甲山の麓に位置する商業地として栄えた土地。
東灘区の六甲山南方には御影駅があるがこのエリア一帯がまさしく御影石の名称の由来となっている地域である。
御影町は御影石を主とした石材の産地である他、「菊正宗」「白鶴」などの多くの造り酒屋が立ち並ぶ日本酒の産地としても有名な地域じゃ。
当初はこの御影町を産地とする花崗岩を加工した石材を御影町の石材として御影石と呼んでおったのじゃが、現在市販されておる御影石の大半は日本産の製品は少なく世界各国の花崗岩を主成分とする石材全般が御影石として販売されておるのが実態じゃ。
尚、現在東灘区エリアから採掘された花崗岩は一般の御影石と分類され「本御影石」として販売されておるのじゃよ。
※御影で採掘される花崗岩は本御影石・もしくは六甲の名から六甲本御影石と呼ばれており高級建築石材として利用されている
御影石を使用した有名な建築物と言えば東京都千代田区永田町に建設された国会議事堂の存在が一番かもしれんのぉ。
国会議事堂は日本の政治の中枢機関とも呼べる場所で建築物の構造、設備、そして建築に使用された建築資材に至るまで重厚な資材を使用して建築されておる。
尚、国会議事堂の外壁に使用されておる御影石は、高級石材の産地として知られる広島県産の「桜御影」を主体とした3種類の御影石が使用されておる。
当時の建築資料である帝國議會議事堂建築概要の記載では国会議事堂の外壁に使用された御影石の量は25500トンと途方も無い重量となっておる。
尚、この議事堂の建築に大量に使用された桜御影は建築家の間では「議員石」という愛称で広く親しまれておるのじゃよ。
日本は海に囲まれた島国であることから資源には限りがある。
その為、建築石材の採掘量は非常に乏しく現在は建築に使用する石材の大半を海外からの輸入に頼っているのが現状である。
日本国産の御影石の価格が高額であり高級品として位置づけられているのはこのような採掘量の違いも影響している。
ここでは日本国産の御影石の種類と主な石材の産地を確認していこう。
御影石の種類は、主に採掘される石材の産地によって種類が分類されておる。
御影石は神戸の御影町エリアで採掘された花崗岩の別称であることは前項で解説したが、産出される地域によって独特の名称で取り扱われておる御影石も幾つかあるのじゃな。
また同じ御影石に分類される石材であっても、各採掘場において御影石に含まれる成分や結晶化の状態に違いが存在する。
その為、配合されている成分の割合の違いや花崗岩として結晶化されるまでの時間などの違いによっても御影石の特徴や品質、そして強度や耐久性が異なってくるという訳なのじゃ。
石材の品質に関わる重要な要素のひとつに地球の火山活動による「地殻変動」による影響が挙げられる。
地球全体の地殻変動は地盤が南北に引っ張られる形で発生する為、北極・南極近辺の地盤は凝縮される形となり赤道近辺の地盤は南北に伸ばされた影響によって亀裂を生じやすくなっておる。
その為、御影石においても赤道近辺の石材は、傷や断裂が多く質の低い石材となる傾向が確認されておるのじゃ。
尚、日本国内の御影石の産地は多数あるのじゃが、やはり石材の産地によっても品質が異なっておる。
御影石は採掘される産地によって独特の名称で呼ばれる石材の種類が多く存在しておる。
ここでは主な御影石の種類と産地を以下の一覧表で確認しておくとしよう。
【代表的な御影石の種類・産地一覧表】 | |||
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番号 | 種類 | 主な産地 | 特徴・解説 |
① | 吾妻黒御影石 | 福島県 | 吾妻御影として知られる。吾妻白御影・吾妻黒御影など。 |
② | 青葉御影石 | 福島県 | 淡い青色の青御影石。墓石に多く使われている。 |
③ | 浮金黒御影石 | 福島県 | 数少ない黒御影の高級石材。現在は海外品が主流。 |
④ | 牡丹御影石 | 福島県 | 希少価値の高い黒御影高級石材。黒い牡丹模様が点在する。 |
⑤ | 白馬御影石 | 福島県 | 福島県阿武隈白馬石山産の石材。硬度・耐久性に優れる。 |
⑥ | 稲田御影石 | 茨城県 | 茨城県笠間市稲田周辺で産出される花崗岩。建築石材として広く普及。 |
⑦ | 真壁御影石 | 茨城県 | 茨城県桜川市真壁町産の御影石。床材・壁材・タイル・墓石など幅広く製品化。 |
⑧ | 六甲本御影石 | 兵庫県 | 最高級石材。御影石の由来となる御影町産の希少石材。 |
⑨ | 万成御影石 | 岡山県 | 淡い桃色の桜御影石で有名。国産の需要が高い硬度の高い石材。 |
⑩ | 北木御影石 | 岡山県 | 岡山県笠岡市北木島町産御影石。「中目」「瀬戸赤」「瀬戸白」「サビ石」の4種。 |
⑪ | 本小松御影石 | 神奈川県 | 神奈川県真鶴町産の石材。主に墓石として製品化。 |
⑫ | 岡崎御影石 | 愛知県 | 愛知県岡崎産の武節花崗岩を総称して岡崎石と呼ぶ。 |
⑬ | 青木御影石 | 香川県 | 香川県丸亀市讃岐広島産の石材。主に建築用石材として使用。 |
御影石は建築資材としての需要だけでなく、その多くは墓石としても多く使用されておる。
これは墓石が何代にも渡り残るものであることから、強度・耐久性に優れる特徴を持つ御影石が積極的に利用されるようになった為じゃ。
また天然の石材を利用することから表面の加工・磨きの課程は同一であっても全く同じ模様の製品が生まれる事は皆無に等しい。
これは他の建築資材と比較すると多少高額とも思える建築石材が不変の需要を生み続けている理由のひとつと言えるかもしれんのぉ。