スプリンクラーとは火災による被害から、人、及び、建築施設、電気関連設備などを守るために、初期消火の際に自動的に作動する強力な消防設備のことじゃよ。
スプリンクラーの設置義務は消防法によって定められており、設置場所、配置の距離の規定なども消防法では明確に定められておる。
また様々なタイプのスプリンクラーヘッドが市販されており、新型ヘッドも開発されておるので、これらのヘッドの特徴を把握することも重要な事じゃ。
スプリンクラーは火災が発生すると自動的にフロアー内に散水が行われ初期段階で火災の拡大を防止することが可能となる消火活動を自動的に行う消防設備の事じゃ。
基本的なスプリンクラーの構造はヘッドと呼ばれる部分に「合金」や「ガラス性の可溶栓」が埋められておる。
これらの可溶栓は火災時の熱によって容易に溶けるので、スプリンクラー設備は栓が熱によって融解し溶けて無くなる事によって散水が開始される仕組みとなっておるのじゃ。
消防設備としての火災の消火能力・効果は非常に高く、平成16年6月2日に公布された消防法の改正基準に伴う一般住宅の火災報知器の設置義務に関してもスプリンクラーを設置する事で、
●消防設備設置規定の緩和措置
が適用となっておるのじゃよ。
その為、近年では一般の戸建て住宅などでもスプリンクラーの設置を行う住宅が徐々に増えてきているのが現状なのじゃ。
スプリンクラー設備は煙探知機との連動によって火災を自動的にシステムで認識し自動的に消火活動を行うための設備である。
スプリンクラーが普及してきた背景には、火災による死亡比率の原因で最も多い逃げ遅れによる原因の対策が必要であるため。
但し建築物の規模や性質はそれぞれ異なる為、様々な種類のスプリンクラー設備が開発されている。
スプリンクラー設備を設置する目的は、万が一火災が発生してしまった際にしっかりと
●自動的に火災を消化する事
が主な目的じゃ。
この自動的という観点から見ると消火器の使用などによる人為的な消火活動とスプリンクラー設備による消火活動は性質が明確に異なる事がわかるのぉ。
消防庁が発表したデータによると
●住宅火災によって死者が出るケースのおよそ6割程度
が火災の際の「逃げ遅れ」によるものであると実際に公表しておる。
※火災によって死亡するケースのおよそ6割は火災の炎から逃げ遅れてしまった事が原因
また火災は寝煙草などの火の消し忘れなどによって就寝中に発生しているケースも非常に多い事から、スプリンクラー設備のように人的な操作や消火活動を必要としない自動消火設備の普及率は今後ますます高まってくる事が予想されるのぉ。
スプリンクラー設備は、商業施設用や住宅用など様々な種類のスプリンクラーが開発されておる。
一般的に最も広く普及しているものは、閉鎖式ヘッド構造による湿式スプリンクラーと呼ばれるものじゃ。
閉鎖式ヘッドとは、ヘッドの放水口にあたる部分を可溶栓で塞いでいるものじゃ。
※可溶栓=熱によって解ける素材で作られた栓
代表的な閉鎖式ヘッド構造による湿式スプリンクラー以外では
☆予作動式スプリンクラー
☆開放式スプリンクラー
などのスプリンクラーの種類があり、用途別によって使用される種類が異なっておるのじゃよ。
スプリンクラー設備の設置が必要と判断される場合は、設計段階から建築物に対するスプリンクラーヘッドの設置場所を綿密に計算しながら配置していく事が求められる。その為、デフレターとヘッドの間隔の規定や突き出した柱や梁、壁などが存在する場合は、性能を十分に発揮できない可能性がある為、スプリンクラーヘッドの設置基準概要によって設置場所の規定が設けられている点がポイントとなる。またダクトの長さによってもヘッドを別途設ける必要性が出てくる点も把握しておくべきポイントとなる。
スプリンクラーヘッドの配置、設置場所の規定は消防法によって細かく規定されておる。
この消防法による設置基準概要の基本は、
●スプリンクラーの性能を発揮できるポイントに配置すること
が基本的な原則にあるのじゃ。
あまりにも当たり前の事ではあるのじゃが、スプリンクラーは火災を消化する目的で建築物内に水道設備や配管を通してまで設置する全体規模で言えば非常に大きな設備となる。
その全てのスプリンクラーヘッドの散水ポイントが消化活動上有効であるというのは中々大変な事じゃのぉ。
また、スプリンクラーの設置基準では
☆有効散水半径
☆防護範囲能力
と呼ばれる基準となる指標があり、指標によっても設置基準が異なる点は注意しなければいけないひとつのポイントじゃ。
以下に、一般的に普及している基本的な閉鎖式スプリンクラーヘッドの設置場所に関する規定を掲載しておくので確認しておくことじゃ。
【スプリンクラーヘッドの設置基準~消防法~】 | |
---|---|
① | スプリンクラーヘッドは取付面とデフレクターとの距離が30cm以内となるように設けること |
② | スプリンクラーヘッドの取付面から40cm以上突き出した梁や壁によって区画された部分ごとに設けること。但し梁、壁の相互間の直線距離が「中心で1.8m以下」の場合は省略できるものとする |
③ | 幅、もしくは奥行きが1.2mを超えるダクト、棚、ほか散水障害となる恐れのあるものがある場合、これらの下部にもヘッドを設けること |
以上が消防法に基づくスプリンクラーヘッドの設置場所に関する規定じゃ。
尚、補足じゃがデフレクターとは、スプリンクラーヘッドの放水口から流出する水流を細分させる作用を行う部分の事を指すのじゃよ。
共同住宅用のスプリンクラー設備に関しては一般の戸建住宅の設置基準とは異なる規定が存在する。ここでは2008年に改正された①スプリンクラーヘッド単位②制御弁③ポンプ吐出量④音声火災警報の範囲の4項目から設置要綱の違いや変遷を確認してみよう。
共同住宅用のスプリンクラーの設置基準については、従来の設置基準から一部変更される点があるので注意が必要じゃ。
尚、この共同住宅用スプリンクラーに関する消防法の改正に関しては
●2008年4月1日(平成19年4月)
とかなり前から既に施行されておる。
スプリンクラー設備を設置した年数が平成19年よりも前の建築物に関しては、対象となる用途である場合は改修工事が必要となる場合もあるので少しでも不安がある場合は管轄エリアの消防署に確認しておくと良いじゃろう。
尚、消防法の改正はスプリンクラー設備の条項に関わらず、近年毎年のように変更が加えられておるので、建築や設計に関わりのある設備に関しては常時、消防法の確認をしておく事が大切じゃ。
以下に、共同住宅用スプリンクラーの設置基準の変更点に関する規定を掲載しておく。
消防法は豆に規定が変化しておるのでこまめに確認しておくことじゃ。
【共同住宅用スプリンクラー設置基準改正概要~消防法~】 | ||
---|---|---|
項目 | 改正前 | 改正後 |
①スプリンクラーヘッド単位 | 水平距離2.6m以下包含 | 水平距離2.6m以下包含かつ13平米以下ごと |
②制御弁 | 閉表示の非常電源は1時間以上 | 閉表示の非常電源は10分間以上 |
③ポンプ吐出量 | 220リットル/分以上 | 240リットル/分以上 |
④音声火災警報の範囲 | 5層以下を1ブロックとした出火ブロック及び直上ブロック | 5層以下を1ブロックとした出火ブロック及び直上ブロック並びにエレベータ昇降路(カゴ内) |
以上の4点が2008年4月1日より改正され現在施行されておる共同住宅用のスプリンクラーの新設置基準概要じゃ。
現在も尚多発しているスプリンクラー設備の誤作動による散水障害。この散水障害を防止するために、水による被害を食い止めたいエリアに関しては手動式のスプリンクラーを設置するオーナーが増えた時期もあった。しかし近年は火災警報器や煙感知器による火災信号とスプリンクラーヘッドの熱感知システムを連動させた予作動式スプリンクラー設備の普及により散水障害の発症率を徐々に低下させる事に成功しはじめている。また更に精度の高いスプリンクラー設備の開発の研究も行われており、今後の技術開発が大きく期待されている。
スプリンクラーの散水障害は想像以上に深刻なものが多い。
しかも残念ながら我々が思っている以上に頻繁に多発しているのが現状なのじゃ。
機械設備を多く配備している火災の危険性が高いフロアーや居室などでスプリンクラー設備が誤作動を招いた場合は、その被害額もやはり相応に大きくなってしまう訳じゃな。
尚、スプリンクラーの散水障害を発症する主な原因としてあげられるのが
☆不注意によるヘッドの破損
☆地震災害などによるヘッドの破損
といずれもスプリンクラーヘッド部分の破損による散水障害の発生が主な原因となっておるがポイントじゃ。
これら散水障害への抜本的な対策としては手動式への切り替えなどが考えられるじゃが、自動消火設備としての本来の役割を果たせなくなるスプリンクラー設備というのはやはりそれもまた問題と言えるのお。
スプリンクラーの散水障害はスプリンクラーヘッド部分の破損による散水の発生が主な原因となっておるのは前項で解説したとおりじゃ。
その為、スプリンクラーを導入したオーナーが、手動式設備への変更を検討しておるケースが多いのも事実なのじゃ。
しかし、そもそもスプリンクラーは自動で消化活動を行う消防設備じゃから、これらを手動式に変えてしまっては本来の機能を失ってしまう事になる。
このような散水障害への対策として近年大幅に普及を果たしたのが
●予作動式スプリンクラー
と呼ばれる設備じゃ。
この予作動式スプリンクラーは、従来のヘッドの破損だけでは散水は開始されず、
☆ヘッド
☆火災感知器
の2点の火災信号が発信された場合のみ散水が開始される仕組みとなっておる。
これらの予作動式スプリンクラーの普及の背景には、消防法の改正に伴う
☆火災警報器
☆煙感知器
などの設置義務の強化が背景にある点も見逃せないポイントじゃ。