建築設計では特に大型の商業施設の設計などの場面で無窓階として判定される階層であるかどうかの判定基準が難しいケースが多いものじゃ。
実際の定義の基準自体は単純明快であるものの建築基準法と消防法それぞれの定義が異なりどちらの基準を取り入れるべきか迷うようなケースもある。
ここでは建築基準法における無窓階の判定定義と消防法における無窓階の判定定義をそれぞれ確認しながらチェックしていこう。
尚、無窓階として判定された階層に関しては消防用設備の設置基準も厳しくなるケースがある点も把握しておくべきポイントじゃ。
無窓階(むそうかい)とは、建築物の地上階のうち総務省令で定められている消火活動上有効とされる
●開口部
をもたない建築物のことを指す。
一般的には、「窓がない階」もしくは「窓が極端に少ない階」が無窓階として該当する可能性のある階と言えるのぉ。
無窓階の意味はイメージしやすいがここでは消防法における判定基準を一度確認しておくとしよう。
消防法による無窓階判定の定義は、
●消防法令10条1項5項
の判定定義、及び
●消防法令5条の2、1項
に従って判定がなされることになっておる。
ここでは消防法令の表記に沿って確認しておくとしよう。
【消防法令10条1項5項~無窓階の定義~】
※建築物の地上階のうち、避難上または消化活動上有効な開口部をもたない階
消防法令10条1項5項の表記からもわかるとおり、
●地上階
としての表記が定義されているため、地階には無窓階の消防規定は適用されないことが解るのぉ。
【階層ごとの無窓階の判定基準】
消防法による無窓階の判定の定義は、
●11階以上の階
●10階以下の階
によって判定定義が異っておる。
以下に階層ごとの無窓階の判定基準をまとめておるので確認しておくことじゃ。
【11階以上の階で無窓階と判定される場合】
※直径50センチ以上の円が内接することができる「開口部」の面積の合計がその階の床面積の30分の1以下である場合。
【10階以下の階で無窓階と判定される場合】
①:直径1M以上の円が内接することができる「開口部」または、幅75センチ以上、高さ1.2M以上の大型開口部が道や道に通じる幅員1M以上の通路に2箇所以上面していること。
②:①の条件を満たし、かつ直径50センチ以上の円が内接することができる「開口部」の面積の合計がその階の床面積の30分の1以下である場合。
消防法と建築基準法の無窓階の判定基準の違いの最たる面は「判定の対象となる単位」の違いじゃ。
消防法では、消火活動及び避難活動を主とした
●階単位
で無窓階の判定を行っておる。
対して、建築基準法では、住居などの一般住宅も含め、
●居室単位
での無窓階の判定を行うことになっておる。
そのため建築基準法では、無窓階ではなく「無窓居室の規定」として規定が定められておるのじゃよ。
【建築基準法の無窓居室の判定定義】
建築基準法で定める無窓居室の判定定義は
●採光上の無窓居室
●換気上の無窓居室
●排煙上の無窓居室
の大きく3種類の判定定義となっておる。
消防法の無窓階の定義とは性質が若干異なる基準となっておる点がポイントじゃ。
設計に携わるものは消防法と建築基準法の双方の定義を把握しておくことが大切じゃ。
【採光上の無窓居室の判定定義】
窓などの有効採光面積が、その居室の床面積の20分の1未満の居室。
【換気上の無窓居室の判定定義】
窓などの有効換気面積が、その居室の床面積の20分の1未満の居室。
【排煙上の無窓居室の判定定義】
窓などの開口部で天井または天井から下方80センチ以内の距離にある開放できる部分の面積が、その居室の床面積の50分の1未満の居室。
以上が建築基準法における無窓居室の判定定義じゃ。
【無窓階の消防用設備の設置基準】
消防法では、建築物の各フロアーや、対象建築物の条件などによって
●消防用設備の設置基準
に関しても基準が設けられておる。
消防法の定義として無窓階として判定された階に関しては、これら消防用の設置基準に対しても基準が厳しくなる点がポイントとなってくるのぉ。
消防用設備の設置基準では、必要とされない消防用設備に関しても、無窓階であることから
●設置義務が生じる消防用設備
もあるので注意が必要なのじゃ。
以下に無窓階として判定された階層において設置基準が強化される主な消防用設備を記載しておくので以下の設備を設置する可能性がある場合は必ずチェックしておくことじゃ。
【無窓階の場合に設置基準が厳しくなる消防用設備の一覧】
●消火器・消火器具
●屋内消火栓設備
●スプリンクラー設備
●排煙設備
●自動火災報知設備
●避難器具
●誘導灯
●非常警報設備