非常用エレベーターの設置義務は、施設の規模や階数によって細かく規定が定められておる。
特に建築物の高さが31Mを超える場合と超えない場合の違いや1フロアー全体の延べ床面積によって非常用エレベーターの設置台数が変わってくる点は大きなポイントじゃ。
非常用エレベーターは効率化を考慮し現実的には非常時だけでなく日常生活範囲内でも使用する事が前提である点も考慮する必要がある。
ここでは床面積に対する非常用エレベーター(昇降機)の設置台数、乗降ロビーの寸法と構造について建築基準法に基づく規定をしっかりチェックしておこう。
非常用エレベーターの設置基準の基本は「31メートルを超える建築物」の場合に適用となる点じゃ。
この非常用のエレベーターは、実際に非常事態が発生した際には非常用エレベーターとして消防隊員が使用することになる。
しかし、平常時にはもちろん一般用のエレベーターとして使用することが可能、と言うよりも一般用としての利用が大半となる。
尚、非常用エレベーターは火災や地震などによって電源供給が断たれた場面でも自家発電機の電力が作動し非常事態であっても消防活動を継続することが可能な設備と規定されている点もポイントじゃ。
非常用エレベーターは31メートル以上の高層建築物にのみ設置義務が定められている。
この31メートルというラインが設置基準となっている理由は一般的に製造されている消防はしご車が31メートルまでしか届かないためじゃ。
その為、31メートル未満の部分に関しては、はしご車から建築物に乗り移ることが出来るように3階以上の全ての階層の外壁面に非常用の進入口を設置することが義務付けられておる。
非常用エレベーターは高さが31メートルを越える部分のフロアーの中で「床面積が最も大きいフロアーの床面積の寸法」によってエレベーターの設置台数を決める規定となっておる。
原則としてフロアーの延床面積が1500㎡以下の場合は昇降機の設置台数は1台。
更に、延床面積が1500㎡を超える場合は、「3000㎡単位」で設置台数が一台ずつ多くなるように設置義務が設けられておるのじゃよ。
※Point!3000㎡単位で設置義務台数が1台増える
非常用エレベーターの設置台数を確認する際の注意点は、31メートルを越えるフロアーの中で「最も大きいフロアーの床面積」を基準として利用する点じゃ。
例えば41階~最上階の50階の床面積が7200㎡で42階のみ床面積が7600㎡のような凹凸のある建築物の場合は、42階の7600㎡を適用する。
7600㎡のフロアーの場合は非常用エレベーターを3台設置する必要がある為、この場合の非常用エレベーターの設置台数は最低でも3台以上を設置する義務があるという訳じゃ。
以下に床面積に対するエレベーターの設置義務台数の簡易表を作成してみたのでチェックしておこう。
【非常用エレベーターの設置義務台数早見表】 | |
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最大のフロアーの床面積 | 設置義務台数 |
①1500㎡以下 | 1台 |
②1500㎡~4500㎡ | 2台 |
③4500㎡~7500㎡ | 3台 |
④7500㎡~10500㎡ | 4台 |
汐留や西新宿の高層ビル街にある建物の非常用エレベーターはいったい何台あるのじゃろうか?
例えば新宿センタービルの基準階床面積は2669㎡となっておる。
その為、最低でも2台の非常用エレベーターを設置する義務があるということがわかるのぉ。
エレベーターの機械室部分が31メートルを超えてしまうケース。
この場合、31メートルを超えてはいるが非常用エレベーターを設置する必要があるだろうか?
ここでは、建築基準法129条13の2によって定められている「免除規定」の確認と装飾塔・階段室・物見塔・屋窓の「緩和措置」について確認しておくとしよう。
※答え:必要ない(緩和措置)
エレベーターの機械室が屋上にあり31メートルを超えてしまう場合。
居室であっても機械室の場合は建築基準法129条13の2によって免除規定が定められている為、非常用エレベーターの設置義務は生じない。
この他、「装飾塔、階段室、物見塔、屋窓」などに関しても緩和措置がある為、設置義務が生じない。
31メートルを超える部分のフロアの床面積が「100㎡ごとに防火区画されている場合」も非常用エレベーターの設置義務が免除される。
防火区画とは耐火構造の建築資材で覆った区画のことで100㎡ごとに区画されている場合は適用となる。
※Point!100㎡防火区画も免除対象
但し、この防火区画の適用は31メートルを超えるフロアの階数が4フロア分までの場合に限る。
もし31メートルを越える部分のフロアが5階以上ある場合は100㎡防火区画であっても免除規定は適用されない。
31メートルを超える部分の全フロアがそれぞれ500㎡以下である場合も免除規定が適用となる。
この免除規定は「各階全てが500㎡以下」であることが条件。
また、主要構造部分が不燃材で構造されており、不燃性の物品の保管などを行うだけのフロアの場合も免除規定が適用となるケースもあるので覚えておこう。